最初に「偽造屋のコピー」を見掛けたのは運び屋だった。犬の血統書を偽造するために使う紙とインクを仕入れに行った出先の地下駐車場で俺を見たと言う。時間は深夜2時17分。住居と兼ねているこの事務所からは30kmほど離れている。夢遊病でない限り俺は事務所のソファで眠りこけていた。仮に夢遊病だったとして眠ったまま30kmは歩けやしない。「人違いだろ?」とモニタを眺めながら呟くと、運び屋はハイエースのキーを応接テーブルに放り投げソファに寝転がった。
「確かに暗がりの中だったけど、アイツは間違いなく偽造屋、お前だったよ。そうでなければ、あれはお前のドッペルゲンガーって訳だ」運び屋は喋り終えると「今、噂の」と付け加えながらワークパンツのサイドポケットから折りたたんだ紙切れを取り出した。「車載カメラからキャプチャーしてプリントしたんだ。見ろよ、お前だろ?」家庭用プリンターでコピー用紙に印刷されたそれには俺らしき人間が写っていた。地下駐車場の柱の影、「3A」と書かれたプレートの下でそいつが口元に少しの笑みを湛えこっちを見ている。Tシャツに黒のジャケットパンツ。黒いセルフレームの眼鏡に、腰からは先週買ったクロムハーツのチェーン。くそったれ、全く理解できないが、まんま昨日の俺じゃねえか。
紙切れを突っ返すと運び屋は壁のコルクボードにそれをピンで貼り付けながら俺に聞いてきた。「今度コイツに会ったとき、なんか伝言ある?」
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